脂肪肝と言われたら
脂肪肝とは
脂肪肝は、肝臓に過剰な脂肪が蓄積する状態を指します。現在一般成人の20-25%に脂肪肝があると言われています。主な原因として、以下の2つがあります。
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD):これはアルコールの過剰摂取によらない脂肪肝で、主に肥満、糖尿病、高脂血症などのメタボリック症候群が関連しています。NAFLDは炎症を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)へ進行することがあり、それによって肝硬変や肝臓がんへと進むリスクが高まります。
- アルコール性脂肪肝:これは過度のアルコール摂取によって発生します。アルコール性脂肪肝も肝炎、肝硬変へと進行する可能性があります。
ここでは主に、1.の肥満やメタボリック症候群に関連した脂肪肝“NAFLD”について説明します*1。
NAFLDの分類
- 非アルコール性脂肪肝(NAFL):脂肪の蓄積はあるものの、炎症や肝障害は見られない比較的軽度の状態。
- 非アルコール性脂肪肝炎(NASH):脂肪の蓄積に加えて、炎症や肝細胞の損傷が進んでいる状態で、肝硬変や肝癌へ進行するリスクが高まります。
NAFLD/NASHの疫学と病態
NAFLのうち10-25%程度が炎症を伴うNASHと考えられ、日本においてNASHの患者さんは日本の少なくとも200万人程度いると言われ、とても頻度が高い疾患です。NASHでは肝細胞に脂肪が蓄積することによって細胞が障害され、炎症と組織修復の結果として線維化が生じ、次第に肝臓が硬くなっていきます。その進行した状態が肝硬変です。糖尿病の方、家族に進行した脂肪肝の患者さんがいる方などは、病気が進行するリスクが高まります。以下に、NAFLDの病態について、当科の中川教授が監修した動画がありますので、詳しく知りたい方は是非ご覧ください。

NAFLDの診断
NAFLDは腹部超音波検査などの画像検査によって診断されます。血液検査では、ALTという酵素の値が高いとNAFLDの可能性があります。肝疾患の啓発活動として2023年に発出された「奈良宣言」では、ALTが30を超えている方は、一度詳しい検査を受けていただくことが推奨されています。(https://site2.convention.co.jp/jsh59/nara_sengen/ippan.html)
また詳しい病状評価や他の肝疾患との鑑別のために、後述の肝生検を行う場合もあります。
肝臓がんのリスク
線維化が進行し肝臓が硬くなるにつれて、肝臓がんのリスクが高まることが挙げられます。肝硬変になると、年率1-3%と非常に高頻度になります。そのため、肝臓がどの程度硬くなっているかを評価することがとても大切で、硬い人では定期的にがんのスクリーニング検査を受けていただく必要があります。
肝臓がん早期発見のためには
肝臓がんの早期発見のためには、各患者さんのリスクに応じて1年に1-2回の腹部超音波検査が推奨されます。また、腫瘍マーカー(AFPやPIVKAⅡ)を利用した血液検査も役立ちます。肝臓がんが疑われる場合は、より詳しい造影CTやMRIでの検査が行われます。肝臓がんのリスク評価には、線維化の程度を調べる必要があり、次のような方法があります。
肝臓の線維化評価方法
- FIB-4インデックス
FIB-4インデックスはAST、ALT、血小板数、年齢から計算される、肝臓の線維化を推測する値です。こちらのサイトでそれぞれの値を入力すると、自動計算されます(https://www.sv.hosp.mie-u.ac.jp/gastro/fib-4/)。
中間値、高値が出た方は肝臓の線維化が進んでいる可能性がありますので、消化器内科受診が推奨されます。

日本消化器病学会・日本肝臓学会編:NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)
- 血液マーカー
血液で調べられる線維化マーカーとして、ヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン7S、オートタキシン、M2BPGiなどがあります。さらに2024年新しい指標として、ELFテストが保険収載されました。 - エラストグラフィ
・トランジェント・エラストグラフィ(FibroScanR)
肝臓に小さな振動を送り、その振動波が肝臓を伝わる速さを測定します。波の速さは肝臓の硬さを反映し、硬ければ硬いほど、線維化や肝硬変の進行が考えられます。この検査は速く、数分で終わりますが、特別な装置が必要になります。
・シェアウェーブ・エラストグラフィ
超音波装置を用いて肝臓内でのシェアウェーブ(横波)の速度を測定します。トランジェント・エラストグラフィと同様に、波の速度が速いほど肝臓の硬さが高いことを示します。通常の超音波で測定でき、機器によっては診断画像を見ながら同時にエラストグラフィも実施できるため、非常に便利です。
・MRエラストグラフィ
MRIを使用して肝臓の硬さを測定する技術で、現在最も高精度な方法です。この検査では、特殊なMRI技術を用いて肝臓内を伝わる振動波の動きを観察し、硬さを評価します。同時に脂肪の蓄積量も測定できます。2022年4月に保険収載されました。まだMRエラストグラフィを有する施設は限られていますが、三重大学ではいち早く導入しており、県内唯一の認定施設です。
- 肝生検
肝臓の組織の一部を針で採取して顕微鏡で調べます。この検査により、肝臓の脂肪化・炎症・線維化の正確な評価、治療効果の確認などが可能になります。ただし稀に出血や周囲の臓器への損傷などのリスクを伴います。肝生検は、肝疾患の診断と管理において非常に価値の高いツールですが、リスクを最小限に抑えるためにも、適切な医療施設で経験豊富な医師によって実施されることが重要です。
NAFLDの治療
- 生活習慣の改善
・食生活の改善:まず総カロリー摂取量を減らすことが推奨されます。特に、高脂肪、高糖質の食事を避け、野菜や良質なタンパク質を含むバランスの取れた食事を心がけることが重要です。
・運動:定期的な運動は体重を減少させ、NAFLDを改善させる効果があります。一般的には、週に少なくとも150分の中程度の有酸素運動が推奨されます。最近では筋力トレーニングも有効とされています。
・体重管理:体重の減少は肝臓の脂肪を減らし、炎症を改善する効果があります。目安としては、(特に肥満の方では)体重を10%程度減少させることが理想的ですが、5%でも肝機能の改善が見られることがあります。
・飲酒制限:脂肪肝と飲酒は協調的に肝病態を悪化させるので、可能な限り飲酒は控えたほうがよいでしょう。 - 薬物療法
日本国内において、現時点でNAFLDに対して保険承認されている薬剤はありません。したがって、併存するメタボリックシンドローム(糖尿病、高血圧、脂質異常症)に対する薬剤の中で、肝病態への効果が期待されるものを選択します。近年、糖尿病薬であるGLP-1作動薬やSGLT2阻害薬、また脂質異常症治療薬のぺマフィブラートの有効性が報告されています。 - 外科手術(肥満手術)
極端な肥満の場合、体重減少を促すための外科手術が選択肢となることがあります。この手術は、体重を大幅に減少させ、NAFLDの進行を食い止める効果がありますが、リスクも伴います。

新規薬剤の治験のお知らせ
三重大学消化器・肝臓内科では、脂肪肝に対する様々な新規薬剤の臨床試験(治験)や新しいNASH治療アプリの開発にも携わっています。参加者を募集していますので、ご興味のある方は三重大学消化器・肝臓内科に御相談ください。
脂肪肝の病態解明に向けた研究開発
私たちは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)等の支援のもと、脂肪肝の病態解明、新規診断法や治療法の開発、さらに最新テクノロジーやAIを用いてプレシジョンメディシン(個別化医療)を目指した最先端の研究を行っており、適宜情報発信をしていきます。
https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20220617-03.html
https://www.mie-u.ac.jp/R-navi/release/cat680/post-50.html
https://www.mie-u.ac.jp/R-navi/release/cat680/post-54.html
https://www.mie-u.ac.jp/R-navi/column/cate004/NakagawaHayato.html

三重大学消化器・肝臓内科への受診方法
健診で脂肪肝と言われた方や、FIB-4インデックス高値など肝臓が硬いかもしれないと言われた方は、是非三重大学消化器・肝臓内科にご相談ください。MRエラストグラフィなど最先端機器による病態評価、専門医によるアドバイスが受けられます。また条件にもよりますが、新規薬剤の治験なども提案可能です。
三重大学病院では外来受診をご希望される場合、原則、他の医療機関からの「紹介状(診療情報提供書)」が必要です。紹介状をご持参されずに直接来院された場合、診療費とは別に初診時選定療養費(8,800円)をご負担いただく必要があります。このため、受診をご希望される場合には地域医療機関(かかりつけ医)の先生から紹介状を作成していただき、初診予約をとっていただくことをお勧めしています。
受診についての詳しい説明は三重大学病院ホームページからご確認ください。
三重大学病院ホームページ
三重大学病院消化器・肝臓内科 外来担当医
補足
*1:2023年6月に病名が変更され、NAFLDがMASLD、NASHがMASHとなりました。ただしこのサイトでは、一般の方がわかりやすいように従来のNAFLDという名称で解説しています。
その他の情報
中川勇人教授が三重テレビで2022年9月30日に放送された『Mieライブ 』の「Front-line 三重大学病院」コーナーに出演した際の動画です。「肝がんの早期発見、早期治療」をテーマとした動画です。(三重大学病院YouTubeチャンネル)
