脳卒中
について知る。
脳卒中は、がん、心臓病と並ぶ日本人の三大死因のひとつです。
年間約13万人もの方が亡くなられています。
また、死亡に至らなかったとしても長期障害の主な原因となるため、病気について理解を深め、生活習慣など予防を行い、
健康寿命の延伸に務めることが大切です。
脳卒中とは?
「脳卒中」とは脳の血管に問題が発生することで、突然脳の機能が障害を受け、その結果として手足の麻痺や言語障害といった症状を引き起こす病気のことを言います。
血栓などにより脳の血管が詰まると脳梗塞、血管が破れると脳出血やくも膜下出血と分類され場合によっては死につながることもあり、救命できたとしても後遺症が残ってしまうことも多い、難しい病気です。
脳卒中の危険因子には高血圧、糖尿病、脂質異常症が挙げられます。また、大量の飲酒や喫煙、肥満やメタボリックシンドロームも脳卒中を生じやすくなるため注意が必要です。
血管が詰まる虚血性脳卒中
- 心原性脳塞栓症
- アテローム血栓性脳梗塞
- ラクナ梗塞
血管が破れる出血性脳卒中
- 脳出血
- くも膜下出血
このように脳卒中は血管の異常から引き起こされる病気です。
では、発症した場合どのような症状が現れるのかをお話ししていきます。
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脳卒中の症状について
脳の中では様々な部位で、多彩な働きをしております。
脳卒中では脳の障害される部位により様々な症状を呈します。主な症状としまして、手足が動きにくい、ろれつが回らない、言葉がうまくでない、言葉が理解できない、まっすぐ歩けずに左右どちらかへふらつく、視野が狭くなる、激しい頭痛などがあります。
特に日本脳卒中協会では、症状を大きく5つに分けて次のように挙げております。
脳卒中の症状CHECK SEAT
- 片方の手足・顔半分の麻痺やしびれ
- ろれつが回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない
- 力はあるのに立てない、歩けない、ふらふらする
- 片方の目が見えない、物が二つに見える、視野の半分が欠ける
- 経験したことがない激しい頭痛がする
これらの症状が突然出現したときには脳卒中の可能性を疑います。
脳卒中って怖い病気ですね。
麻痺のような症状が突然発症するなんて...。
なにか備えることはできないんですか?
そうなんです。脳卒中はとても怖い病気なんですよ。
しかし、生活習慣に気を配ることで
その発症率を下げることもできるんです。次に、
脳卒中にならないための予防方法を知っていきましょう。
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脳卒中の予防について
脳の血管が詰まったり、破れたりする脳卒中では、血管を大切にすることが予防につながります。最も重要とされているのが血圧管理です。塩分の取りすぎに注意し、高血圧がある方はしっかりと管理をしましょう。
そのほか、糖尿病や脂質異常症も動脈硬化を進めてしまうので、食事療法や運動療法、さらには薬による治療が勧められることがあります。大量飲酒や喫煙も動脈硬化につながりますので、控えるようにしましょう。
心房細動があるかたは血栓予防薬が必要となることがありますので、かかりつけの先生にご相談をしてください。
正常な血管コレステロールがたまり
細くなった血管血栓が形成され
詰まった血管
脳卒中の予防には
「毎日の積み重ね」が大切です!!
日常的に
適度な運動塩分を控え
バランスの良い食事過度な飲酒や
タバコはNG必要に応じた
薬での予防血圧・脈拍・体重を
自分で測りましょう
なるほど!毎日の生活を見直すことが
結果、予防につながるんですね!!
私も早速とりくんでみます!!
はい!毎日の小さな積み重ねが大きな予防につながる。
そう覚えてください!しかし残念ですが、
予防を頑張っていたとしても病気になってしまうことも
あります。次は病気になってしまったとき、
どのような治療を行うのかをご説明します。
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脳卒中の治療について
脳卒中は大きくわけて、血管が破れる出血性脳卒中と血管の詰まる脳梗塞とがあります。
さらに脳梗塞は原因によって、心臓にできた塞栓が脳血管に詰まる「心原性脳塞栓症」、動脈硬化によって太い脳血管が詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」、末梢の細い血管が詰まる「ラクナ梗塞」に分かれます。
出血性脳卒中は、脳組織中の細い血管から出血する「脳実質内出血(脳出血)」と、大きな血管にできた瘤(脳動脈瘤)から出血する「くも膜下出血」があります。
脳卒中の治療は、それらの種類によって異なります。
脳梗塞に対しては病状の悪化を防ぐ薬物治療が中心となります。
ラクナ梗塞とアテローム梗塞は動脈内に血栓が作られるのを防ぐ「抗血小板薬」、心原性脳塞栓症は心臓内に血栓ができるのを防ぐ「抗凝固薬」が主に用いられます。
また脳梗塞発症後すぐの超急性期であれば、「t-PA」という血栓を溶かす薬を投与したり、「血管内治療」といってカテーテルを用いて血栓を除去することで脳の血流を再開通させることもできます。
脳出血は高血圧が原因のことが多く、血圧を下げる薬を投与します。
くも膜下出血は出血源である脳動脈瘤に対し、手術にて動脈瘤をクリップで挟む「開頭クリッピング術」やカテーテルを用いて動脈瘤内に金属製のコイルを詰める「血管内コイル塞栓術」で止血を行います。
血管が詰まる
虚血性脳卒中での治療例
- 薬物治療「t-PA治療法」
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動脈が血栓によって閉塞した直後から脳細胞は死にはじめてしまいます。
そこで、脳血管が詰まってすぐに血栓を溶かし脳血流を再開することで脳梗塞となるのを回避したり、脳梗塞の範囲を最小限にとどめることができます。
日本では血栓溶解療法として、組織型プラスミノゲン・アクティベーター(tissue-type plasminogen activator: t-PA)という薬が2005年より認可されております。
ただ、出血などの合併症が起きる可能性のある薬であり、症状がでてから4時間30分以内であること、血液検査で出血しやすい背景がないこと、などの条件に合うか慎重な判断が必要です。
脳梗塞発症後すぐに点滴からt-PAを投与することで血栓を溶解し、脳梗塞およびそれに伴う症状を回復させる効果が期待でき、データとしてはおよそ3割の症例でほぼ障害のない状態まで回復するとされております。
- カテーテル治療「血栓回収療法」
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閉塞の原因が血栓である場合、カテーテルを用い吸引あるいは器具に絡ませ回収する「血栓回収療法」をおこないます。ただしこの治療法は、発症から6時間以内、あるいは発症時刻がわからない場合、画像検査で脳梗塞の程度を判断、最終健常時刻から24時間以内であれば適応となる治療法です。
- 薬物治療「抗血小板療法」
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動脈硬化部にコレステロールなどのが沈着しさらに進行するとプラークと呼ばれる病変ができます。このプラークが動脈の内腔を狭くしたり、プラーク自体が破裂し血栓が形成され閉塞を引き起こします。脳動脈が閉塞し起こるのが「アテローム血栓性梗塞(a)」。頸動脈が閉塞し起こるのが「頚動脈狭窄症(b)」。脳を栄養する細かい血管に起こった場合「ラクナ梗塞(c)」となります。この場合いずれも、抗血小板薬を使用します。
- 薬物治療「抗凝固療法」
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血流が比較的ゆるやかな心臓(左房)や末梢静脈ではフィブリンとよばれる血液凝固に関わるタンパクが原因となり血栓が形成され易いと言われています。
この血栓が、大動脈、頚部の動脈を経て脳動脈に詰まることで起こるのが「心原性脳塞栓症」。この場合は、 抗凝固薬を使用します。
血管が破れる
出血性脳卒中での治療例
- 薬物治療
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脳出血の原因には高血圧、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、海綿状血管腫、静脈性血管腫などがありますが、ほとんどは高血圧性です。高血圧性脳出血は脳に入っていく細い血管から出血することが多いとされます。CTやMRIなどの検査で血管異常がなく、出血量が少ない場合は薬物療法を行います。具体的には、出血増大を防ぐために血圧を厳格にコントロールしたり、止血剤の投与を行います。また、脳出血により周囲の脳の腫れ(脳浮腫)や頭蓋内圧の上昇を来している場合は浸透圧利尿薬の投与を行います。
脳出血の部位や大きさによっては手術治療を行う場合もありますが、出血によって脳がすでに破壊されており、手術治療の目的はあくまで救命となります。一度破壊されてしまった脳は元に戻らず、脳出血が止血され状態が安定した後は後遺症に対してリハビリテーションを行います。 脳出血後の治療の目的は「さらなる病状の悪化を防ぐこと」となりますので、最善の治療は予防です。塩分摂取の制限、禁煙、過度の飲酒を控えて適度な運動を行い、それでも血圧が高い場合は降圧剤の内服がすすめられます。
- 手術治療
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小さな高血圧性脳出血は手術を行わずに自然に吸収するまで待つのが最善の治療となりますが、 神経症状が重篤で脳出血の部位や大きさによっては手術を行います。また、脳出血の原因が脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻などの場合は再出血予防目的に手術がすすめられます。ここでは高血圧性脳出血の手術治療について説明します。手術には大きく分けて3種類あります。
開頭手術全身麻酔で頭蓋骨を外し、顕微鏡を用いて血腫を除去します。昔から行われているスタンダードな方法になりますが、侵襲はやや大きくなります。出血量が多く頭蓋内圧が上昇している場合はこちらが選択されます。
内視鏡手術局所麻酔でも可能で、小さな穴から内視鏡を使用し血腫を除去します。近年、低侵襲な治療として増加傾向です。
定位的血腫除去術こちらも局所麻酔で可能で、CTなどを用いて出血の中に管を入れて徐々に出血を外に流し出す治療法ですが、最近ではほとんど行われていません。
これらの治療法を患者さんの状態に応じて行います。
- クリッピング術
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全身麻酔下に開頭し、顕微鏡を用い瘤の根元に金属製クリップをかけ、瘤の中に血液が入らないようにすることで破裂を予防します。クリップは特に理由がない限り留置したままになります。チタン製のものが主流であり、特殊な例を除いてMRIも可能です。 クリッピング術は根治性に優れており、動脈瘤の状態を直接目で確認しながら操作を行うため、複雑な形の動脈瘤にも対応可能、手術中の出血にも対処しやすいという長所があります。一方、開頭するため体に負担がかかり、脳の深い部分にある動脈瘤では治療が難しくなるという短所もあります。
- 血管内治療
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局所麻酔もしくは全身麻酔にて、脚の付け根などの動脈からカテーテルを挿入、X線透視画像をみながら行います。動脈瘤の中に金属(プラチナ)製のコイルを挿入することで破裂を予防する塞栓術に加え、バルーンやステント(網目状の金属の筒)でコイルを押さえて塞栓する方法があります。さらに、血液の流れを変化させることで瘤の中にコイルをいれることなく瘤内を血栓化させて治療する「フローダイバーター」という選択肢もでてきました。これらを使い分けて最適な治療を行います。コイルやステントは基本的に留置したままとなりますが、MRIの撮影も可能です。
開頭しないため体への負担が軽く、脳に触れることなく治療が可能であり、クリッピング術では難しい深部の動脈瘤も治療できるという長所があります。一方で術中出血の対処に技術を要する、治療後しばらくしてから瘤内への血流が再び認められるようになり再治療が必要となることがあるなど短所もあります。コイル塞栓術
(Medtronic提供)フローダイバーター
(Medtronic提供)PulseRider
(CERENOVUS提供)
脳卒中の治療は血管が詰まるのか、破れるのか、
また脳のどこにその原因があるのかによって
様々です。どれも成果のある治療法ではありますが、
早ければ早いほど有効性が高く、
後遺症を軽くできる可能性が高まります。
脳卒中の症状が確認できた時点で迷わず119番してください!!
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脳卒中のリハビリについて
治療後のリハビリテーションは、軽度、重度に関わらず日常生活に戻るため、また再発防止のため非常に重要な医療です。お一人おひとりの状態に合わせ、理学療法、作業療法、言語聴覚療法などを処方します。
リハビリテーション無理なく継続することが大切です。具体的なリハビリテーションとはどのようなものなのかご紹介します。
詳しくはこちら
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