当科の特色

1) きらずに治す癌治療

放射線治療の大きな特徴は、臓器の形態や機能を温存しつつ癌を治癒させることです。喉頭癌をはじめとする頭頸部癌は、この特徴を最も生かせる対象疾患です。また、乳癌に対する乳房温存療法もすでに広く認知されています。近年では、治療技術の著しい発展により、頭頚部癌や前立腺癌に対するIMRT(強度変調放射線治療)、肺癌に対する定位放射線治療などの高精度放射線治療が行われ、根治目的の放射線治療が多く行われるようになってきました。

2) からだにやさしい治療

放射線治療のもうひとつの特徴は、手術や抗がん剤治療と比べて比較的楽に受けられるという点です。1回あたり10~20分程度、姿勢を保つことができれば治療可能で、その間に痛みや熱さを感じる事はありません。治療期間は短い場合で数日、多くは5~6週間程かかりますが、外来通院による治療も可能なので、仕事を続けながら治療を受けて頂くこともできます。

主な診療対象疾患

・脳腫瘍
・喉頭癌、咽頭癌、舌癌など、頭頸部領域の癌
・肺癌、食道癌、乳癌など胸部領域の癌
・膵癌、胆管癌、肝臓癌、直腸癌など腹部領域の癌
・子宮癌、前立腺癌、膀胱癌など骨盤領域の癌
・悪性リンパ腫、骨髄腫など造血器腫瘍
・小児悪性腫瘍
・骨軟部腫瘍

診療実績

令和2年度(R2.4~R3.3)   放射線治療実績

新規放射線治療患者数 632人
延べ照射人数/件数  830人/17,411件

定位照射 81件
 脳 26件
 肺、肝 41件
 骨、オリゴメタ 14件

強度変調放射線治療 300件
 前立腺癌 52件
 頭頸部癌 87件
 食道癌 19件
 婦人科(子宮癌等) 28件
 骨盤部(直腸癌等 36件

当院使用機器

放射線治療
放射線治療装置
(3台)
Novalis Tx (Varian/BrainLAB)
Novalis Tx (Varian/BrainLAB)
Clinac iX (Varian)/ExacTrac(BrainLAB)
小線源治療装置 Flexitron HDR(Elekta)
CTシミュレータ SOMATOM Confidence RT Pro (SIEMENS)
LightSpeed RT-16 (GE)

診療内容の特色と治療実績

1)外部照射
Novalis Txを用いて、通常の外照射に加えて高精度放射線治療(定位放射線治療、IMRT)を行っています。

・体幹部定位放射線治療(SBRT)
ピンポイントで放射線を集中し、高い治療効果を得る照射法です。腫瘍が5cm未満でリンパ節転移のない肺癌、肝細胞癌に適応があります。局所的には手術とほぼ同等の効果が得られ、照射される範囲が小さいため副作用も少なく、「きらずに治す」放射線治療の特徴をよく現した治療法です。手術が困難な方や高齢の方でも受けることができ、また照射回数も通常の照射に比べて少ないので、外来通院で比較的楽に治療することが可能です。

・強度変調放射線治療(IMRT)
IMRTは最新のコンピュータ技術を駆使した高精度放射線治療で、放射線を腫瘍の形状に沿った形に照射できる方法です。照射線量を腫瘍に集中することで治療効果を高めるとともに、周囲臓器の線量をへらすことで副作用も軽減されます。

・画像誘導放射線治療(IGRT)
当院では位置合わせに際し、治療室設置型の画像照合システム(ExacTrac, BrainLAB社)を用いたIGRTを行っています。ExacTracは、短時間で正確な位置合わせが可能で、皮膚表面では正確性が担保できない場合や、速やかな照射が要求される場合にも大変有用なシステムです。又、定位照射やIMRTなどの高精度放射線治療を行う場合は、照射の際の位置合わせの精度がより重要となりますが、当院の放射線治療では、ライナック一体型の画像照合装置(OBI)でCT画像を撮影して身体内部の情報を基にリアルタイムの位置修正を行っています。

2)小線源治療(Brachytherapy)
・リモートアフターローディングシステム(RALS)
RALS(遠隔操作で小線源を患部に誘導する装置)を用いて、子宮頚癌などの婦人科癌、肺癌、胆管癌などに対する高線量率小線源治療を行っています。子宮頚癌は外照射と共に小線源治療を行う事が標準的な治療法ですが、三重県では当院のみに小線源治療装置が設置されているため、県内各地からもご紹介を頂いています。

・前立腺がんに対する小線源治療
前立腺がんに対して、低線量率のI-125(放射性ヨード)線源を永久刺入する放射線療法です。前立腺の大きさに応じて40~80個程度の線源を刺入しますが、比較的侵襲が少なく、治療成績は手術とほぼ同等とされています。数日の入院を要しますが、外照射に比べて治療に要する期間が短いことも特徴の一つです。

3)RI(放射線同位元素)内用療法
・甲状腺癌に対するI-131治療(入院);27例
・甲状腺癌・全摘出後アブレーション(外来);14例
・甲状腺機能亢進症に対するI-131治療;8例