見学・研修お問い合わせ
menu

低侵襲治療の紹介

ロボット支援手術

近年、ロボット支援による腹腔鏡下手術が開発され、急速に普及しています。泌尿器科領域では、前立腺癌に対する前立腺全摘術が保険適応となって以来、現在は腎臓癌に対する腎部分切除術・根治的腎摘除術、腎盂尿管癌に対する腎尿管全摘除術、膀胱癌に対する膀胱全摘除術などの悪性腫瘍の手術だけではなく、良性副腎腫瘍に対する副腎摘除術、腎盂尿管移行部狭窄症に対する腎盂形成術などの良性疾患まで保険適応が広がっています。ロボット支援下手術によって、手術の創が小さくなるだけではなく、より正確な手術を行うことが可能となりました。その結果、手術成績が向上し、出血の量も減少、手術の回復も早くなっています。
三重大学では、2014年11月に三重県で初めてこのダヴィンチを導入しました。当科では今までに900名を超える患者様にダヴィンチによる手術を提供しております。現在、三重大学ではダヴィンチを三台体制で運用しており、より多くの患者様にこの低侵襲治療を提供することが可能となりました。特に、2024年1月からは最新の手術システムであるダヴィンチSPが導入され、さらなる低侵襲化が可能となっています。

ロボット手術支援システム

ダヴィンチXi サージカルシステム

ダヴィンチSPサージカルシステム

現在世界で最も普及しているロボット手術システムであるダヴィンチは1990年代に米国で開発され、1999年よりIntuitive Surgical社により提供されています。ダヴィンチは、あくまで外科医が行う手術操作を支援するための装置で、ダヴィンチが自動的に手術をするものではありません。どの術式でも1-3cm程度の小さな創(ポート)よりロボットアームに装着された内視鏡カメラや手術器具などを挿入し、高度な内視鏡手術を行うことが可能です。具体的には、内視鏡カメラにより術者は手術部位を最大15倍の拡大視野で立体的に観察することが出来ます。また、手術器具は写真のように両手指を動かすことにより操作でき、極めて繊細な動きを、手振れ無しに再現できます。
更に、従来の腹腔鏡手術と同様、お腹に二酸化炭素ガスを注入して手術を行いますので、その圧により出血量を減少させることが可能です。
このダヴィンチには、複数のポートからロボットの手術器具を挿入するマルチポートシステム(ダヴィンチXi)と単一のポートからすべての手術器具を挿入するシングルポートシステム(ダヴィンチSP)が存在します。ダヴィンチSPではポートのサイズは2.5-3.5cm程度とやや大きくなるもののポートの数を減らすことが可能で、手術の更なる低侵襲化が可能となり、美容的にも優れています。

前立腺全摘術

前立腺全摘除術は早期の前立腺癌の標準的治療のひとつです。現在当科ではほぼすべての患者さんに対してロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術を行っており、今までに500例以上の患者様がこの手術を受けられています。
前立腺全摘除術は、患者さんの前立腺・精嚢を切除する手術ですが、切除した後に膀胱と尿道の断端を縫い合わせる必要があります。この縫合操作はダヴィンチが得意とすることの一つです。また、前立腺は骨盤の奥に存在する臓器ですので、ロボット支援システムのメリットを最大限に生かせる手術の一つと考えられます。

  • 手術は通常、頭を下げた仰向けの体位で行います。下図に示すように、腹部に作成した傷から手術を行います(Xiでは6か所、SPでは2か所)。手術時間は約3-5時間で、輸血が必要なことは稀です。尚、ダヴィンチXiでも可能ですが、SPでは頭を下げない体位でもより容易に施行できるため、緑内障などで頭を長時間下げられない患者さんでも安全に手術が可能です。
  • 術後は問題がなければ、術翌日より歩行、経口摂取は可能で、約1週間後に膀胱留置カテーテルを抜去し、退院となります。

術後の尿もれについて

前立腺全摘除術後しばらくは、腹圧性尿失禁(咳やくしゃみをするなど腹圧が加わる時の尿漏れ)を生じることが多いです。術後尿失禁の程度には個人差がありますが、徐々に改善することがほとんどです。

術後の男性機能について

前立腺の両側には勃起を司る神経があり、この神経を温存しなければ男性機能は失われますが、この神経を温存することで術後の勃起機能温存が期待できます。ロボット支援手術は通常の手術よりも機能温存に優れており。術後勃起可能となるのは片側の温存で3~4割、両側の温存でも5~6割程度です。神経温存の可否は癌の存在部位などにより決まります。

  • 患者さんの状態や前立腺癌の状況に応じて、ダヴィンチXiとSPを使い分けています。

腎部分切除術

腎部分切除術とは癌とその周囲の部分のみを切除し、正常な腎臓を温存する方法です。一般的には直径4cm未満の早期の腎癌が適応となります。
現在当科では腎部分切除はほぼ全例ロボット支援下で行っており、今までに300例以上の患者様がこの手術を受けられています。
この手術では、腫瘍と正常な腎臓をしっかりと見極め切除を行うことが必要で、ダヴィンチで得られる拡大視野とスムーズな操作性が大きな効果を発揮します。また、十分な止血を行うために腎臓を縫い合わせることが重要ですが、これもダヴィンチの得意とするところです。

  • 手術は腫瘍のある側を上にした横向きの体位で行います。手術の部位などによりますが、下図に示すような、腹部に作成した傷から手術を行います(Xiでは6か所、SPでは2か所)。手術時間は約2-4時間です。輸血が必要なことは稀です。
  • 術後は問題がなければ、術翌日より歩行、経口摂取は可能で、術後約5日程度で退院となります。
  • 術後の合併症としては、稀ですが腎臓からの尿の漏れ(尿婁)や腎臓の血管の異常(腎動脈瘤、動静脈婁)などが生じる可能性があります。
  • 患者さんの状態や腎細胞癌の状況に応じて、ダヴィンチXiとSPを使い分けています。

膀胱全摘術

膀胱全摘術は浸潤性膀胱癌に対する手術方法です。従来の開放手術と比べ、ロボット支援下膀胱全摘出術では、癌の根治性を保ったままで、出血量を少なく、傷も小さく、手術後の合併症を減らすことが可能であったと報告されています。そのため、日本を含め、世界各国で急速に普及してきています。
当科では現在までに約70名の患者さんに対し手術を行っています。

  • ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術とほぼ同様のポートを作成し手術を行います。
  • 骨盤の中のリンパ節を摘出した後に、膀胱、前立腺、尿道を一つにして摘出します。膀胱を摘出すると、別に尿の出口を作成する必要がありますが、多くの症例で大きく腹部を切開することなく、ロボット操作のみで作成が可能です。
  • 尚、膀胱全摘術は基本的にダヴィンチXiで手術を行っています。

腎尿管全摘除術

腎尿管全摘除術は腎盂癌・尿管癌に対する手術方法で、腎臓・尿管と共に膀胱の一部も切除術します。従来は腎臓と上部の尿管は腹腔鏡下に下部尿管と膀胱の一部は開腹で手術を行っていましたが、ダヴィンチを用いることによりすべてをロボット支援下に行うことが可能となっています。今後は、より傷が少なく低侵襲なダヴィンチSPでの手術も開始する予定です。

  • 手術は摘出を行う側を上にした横向きの体位で行います。手術の部位などによりますが、下図に示すような、腹部に作成した傷から手術を行います(Xiでは6か所、SPでは2か所)。ただし腎臓を取り出すため、5㎝程度の皮膚切開が必要となります。手術時間は約4-6時間です。輸血が必要なことは稀です。
  • 術後は問題がなければ、術翌日より歩行、経口摂取は可能で、約1週間後に膀胱留置カテーテルを抜去し、退院となります。

腎盂形成術

腎盂形成術は腎盂尿管移行部狭窄症に対する手術方法です。腎盂尿管移行部狭窄症は先天的あるいは後天的に尿路が狭く通過障害を起こしている状態で、腰背部の痛みが生じることにより生活の質が低下したり、通貨障害のために腎臓の機能が悪化することがあります。
腎盂形成術では尿管の狭い部分を切除し、その両端を縫合します。
以前は腹腔鏡下に手術を行っていましたが、ダヴィンチを用いることにより精細な縫合手技が可能となっています。この手術はダヴィンチSPを用いることにより下着に隠れる一か所の傷で施行可能であるため、現在当科ではダヴィンチSPで手術を行っています。

  • 手術は手術を行う側を上にした横向きの体位で行います。下図に示すように下腹部の3㎝の傷から手術を行います。手術時間は約3-4時間です。
  • 術後は問題がなければ、術翌日より歩行、経口摂取は可能です。術後3日で膀胱留置カテーテルを抜去後、術後5日程度で退院となります。

三重大学泌尿器科におけるロボット支援下手術件数

2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023
前立腺全摘術 57 69 78 83 73 52 57 62
腎部分切除術 0 15 33 34 50 62 56 41
根治的腎摘除術 0 0 0 0 0 0 0 3
腎尿管全摘除術 0 0 0 0 0 0 1 10
膀胱全摘術  0 0 0 1 22 11 12 23
腎盂形成術  0 0 0 0 1 2 5 4