リハビリ
について知る。
リハビリテーションとは、病気が原因で起こった障害の改善は
もちろんですが、再発防止のためにも非常に重要な治療です。
患者さん一人ひとりの症状に合わせて、
専門のスタッフたちがサポートを行います。
より良い生活を送るため治療を継続することが何よりも大切です。
脳卒中
リハビリテーションとは?
脳卒中のリハビリテーションは、脳卒中により引き起こされた様々な障害を改善に努め、より良い家庭生活や社会生活への復帰を目的とします。
障害の現れ方は一人ひとり異なり症状が全く同じという患者さんは一人もいないと言ってもよいほどです。
そのため医学的な検討を加えた上で、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など専門家が一人ひとりの患者さんに最も適したオーダーメイドの治療プログラムを構成します。
リハビリテーションに関わる
専門スタッフ
脳卒中
リハビリテーションの内容
脳卒中が原因で引き起こされる
「麻痺症状」「嚥下障害」「高次脳機能障害」等、
障害の状態にあわせたリハビリテーションを行います。
麻痺症状
症状とリハビリについて
脳卒中後の典型的な後遺症の一つに「片麻痺」があります。
これは半身の手足が動かなくなる症状です。
これにより歩くことや、手を使った動作が難しくなります。片麻痺に対するリハビリテーションとして、「歩行訓練」や「上肢機能訓練」を行う必要があります。
歩行障害のリハビリテーションの一つに「下肢装具療法」があります。麻痺のある足を装具で制御することにより、歩きやすくなったり、より効果的な歩行訓練が可能となるため、脳卒中治療ガイドラインでも行うことが推奨されています。
装具にはいくつか種類があり、その選定にはリハビリテーション専門職種のかかわりが必要になります。
三重大学病院のリハビリテーション科では義肢装具外来を設け、装具が必要な患者さんに対応しています。半身麻痺のリハビリイメージ
痙性麻痺について
また、脳卒中の麻痺には体の一部がつっぱって固くなってしまう「痙性麻痺」という症状があります。
麻痺自体は軽度でも筋緊張亢進が強いと、様々な動作に支障がでてきます。「痙性麻痺」の症状ボツリヌス療法
脳卒中の筋緊張亢進に対する治療として最近では「ボツリヌス療法」が盛んにおこなわれています。
これは筋緊張の高い筋肉にボツリヌス菌の産生する毒素を注射することで筋肉を柔らかくする治療です。これにより歩行がスムーズになり、上肢を使用した動作が改善され、介護量も軽減されます。関節がかたくなるのを予防する効果や、筋緊張亢進により生じていた痛みの軽減も期待できます。
また、筋緊張亢進が軽減することで、今までできなかった動作が可能となり、リハビリテーションの効率が上がります。ボツリヌス療法の効果ボツリヌス療法後にはストレッチをしっかりして頂くことが非常に重要です。ストレッチをしっかりすることでボツリヌス療法の効果が高まり、効果の持続時間を延長させることができます。
ストレッチイメージストレッチイメージ
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嚥下障害
症状と検査について
脳卒中後のもう一つの後遺症としてものを食べたり飲みこんだりできなくなる「嚥下障害」があります。
嚥下障害になると、食べ物が肺に入ってしまい、肺炎を起こしたり、十分にものを食べることが出来なくなり栄養状態がわるくなったりします。
嚥下機能を詳細に評価する検査として、嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査があります。嚥下内視鏡検査は細い内視鏡でのどを観察しながら、ものを食べたり飲んだりして頂き、のどの動きなどを観察する検査です。嚥下造影検査は透視室で造影剤入りの食べ物や水分を食べたり飲んだりして頂いて、のどの動きなどを観察する検査です。
三重大学病院では耳鼻咽喉・頭頸部外科の外来でおこなっています。嚥下内視鏡検査の様子嚥下内視鏡検査の様子
自分でできる嚥下障害のリハビリテーションとして開口訓練などがあります。口を大きく開けることであごの下の嚥下に関連する筋力を鍛えることが出来ます。
自分でできる嚥下障害の
リハビリテーション- 嚥下関連筋群の筋力トレーニング
- 最大開口位を10秒間保持
- 10秒休憩
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高次脳機能障害
症状と検査について
脳卒中後のわかりにくい障害として「高次脳機能障害」があります。
典型的な高次脳機能障害としては
●言葉を理解したり話したりすることが難しくなる「失語症」
●空間の半分の認識ができなくなる「半側空間無視」
その他として
●集中力がなくなる「注意障害」
●物事を計画立てて行うことができなくなる「遂行機能障害」
●感情のコントロールができなくなる「社会的行動障害」
などがあります。
麻痺などはなくても高次脳機能障害だけ残っている方もおり、周りからは障害がわかりにくく、職場や家庭環境でトラブルなどが生じやすくなります。
高次脳機能障害に対しては問題が生じにくくなるような環境調整や生活指導を行います。
三重大学病院では脳神経内科が担当しています。高次脳機能障害の一例
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リハビリで重要なこと
-
症状の種類にあわせ様々な方法で改善に努めるのが脳卒中のリハビリテーションになります。
苦痛を伴うものも多く、それに努力し続けるのは実に大変なことです。
ご自身でできることを少しずつ増やしながら、自立した生活を取り戻すことを目標と掲げ努力を続けることが「脳卒中リハビリテーション」において重要なことといえます。
心臓病
リハビリテーションとは?
心臓病のリハビリテーションは、体力回復に努め、より良い家庭生活や社会生活への復帰を目的とするとともに、再発や再入院を防止することを目的とします。
医師、看護師、管理栄養士、ソーシャルワーカーなど多くの専門家がかかわり、一人ひとりの患者さんの状態に応じた総合的プログラムのことをさします。
心臓病の患者さんは心臓の動きが低下していることから、日常生活における様々な活動に制約がでてしまいます。これに対し運動療法は活動範囲を広げることに貢献します。
また、心臓病の原因となる動脈硬化の進行を防止する目的で食事指導を含む生活指導もリハビリの一環として行います。
リハビリテーションに関わる
専門スタッフ
心臓病
リハビリテーションの内容
心臓の状態を検査して
適切な治療を行います
- 病気の原因を知るための様々な検査があります
- 病気の内容に応じて適切な治療を行います
- ご自身の心臓の状態と治療を理解しましょう
一人ひとりの状態を知るためしっかり検査を行い、
各専門スタッフより次のような改善指導をさせていただきます!
内服を守って
病気を管理しましょう症状に応じた心臓や血管を守るための大事なお薬が処方されます。
飲み忘れを防いで自分の身体を守ることを心がけましょう。
心配なことや疑問があるときは医師や薬剤師に相談しましょう。お薬にはこんな効果が
あります- 血圧を下げる薬
- 心臓や血管にかかる負担を減らします
- 血液をサラサラにする薬
- 血液のかたまりが脳や心臓の血管に詰まるのを防ぎます
- 心拍数を抑える薬
- 心臓の負担を減らします
- 尿を増やす薬
- 体から余分な水分を排出して心臓や血管の負担を減らします
体に有害であることを理解し
禁煙に努めましょうタバコの煙には200種類以上の有害物質が含まれます。
喫煙は血管を収縮させ、心臓と血管に負担をかけるとともに全身の血管の動脈硬化を進行させます。
ご自身での禁煙が難しければ、禁煙外来を利用するのも良い方法でしょう。禁煙に関するポイント
- 禁煙すると味覚がよくなり、
食事を美味しく感じるようになります - 禁煙して体重が2-3kg増えても、
禁煙するほうが身体へのメリットが大きいとされます
- 禁煙すると味覚がよくなり、
適切な運動を生活に取り入れ
心臓を守りましょう適切な運動で体力・筋力を維持することは心臓病の悪化を防ぐことに繋がります。
ふくらはぎは「第2の心臓」といわれます。
筋肉が血液を送るポンプの役割を果たし、心臓の負担を軽減します。
20-30分~60分を週3回以上が目安とし、「ややきつい」を超えない程度の運動を継続しましょう。
5分、10分ずつの運動の積み重ねも効果があります。
栄養で心臓と身体を
維持しましょう塩分を控えたり、アルコール摂取を適量にすることは、心臓と血管の保護につながります。塩分を控えても、適切な量の食事をしっかり摂取することが大切です。
心臓病の種類によっては水分摂取の制限が必要な場合がありますのでご自身の状態をしっかり理解し、食事に配慮することをこころがけましょう。塩分を控えるコツ
- いつもより少し薄味に
- 漬物や加工食品を控える
- ダシやスパイスをきかせる
- 麺類の汁は残す
- 汁物は具だくさんに
- ソースや醤油はかけるよりも小皿で少量つける
健全な心理状態を保ち
リハビリに取り組みましょう心理状態が悪いと心臓の負担になります。
慣れないリハビリの中で、ストレスを感じたときは必ずスタッフに相談するようにしてください。
強いストレスは病気の悪化につながる恐れがあります。
禁煙・食事・運動、すべて行おうとすること自体がストレスになる場合があります。
できそうなことから取り組み、上手に心臓の病気とつきあうことが大切です。
リハビリで重要なこと
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このように専門スタッフからの指導に従い、病気の改善、再発防止に努めるのが心臓病のリハビリテーションになります。一人ひとりの状態に合わせ専門スタッフがサポートを行いますが、病気に対ししっかりと向き合い改善に努めようとする患者さん自身の気持ちが何よりも大切です。
患者さんを中心として共に病気に向き合い続ける。それが心臓病リハビリテーションにおいて最も重要なことだと考えています。